総裁定例記者会見(内田副総裁代理・2026年6月16日)
全文
§1Question
内田副総裁、本日の金融政策決定会合の内容につきましてご説明をお願い致します。
§2Shinichi Uchida
本日の決定会合ですけれども、金融市場調節方針の変更および長期国債の買入れ計画を決定致しました。まず金融市場調節方針についてですが、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を従来の 0.75%程度から 1.0%程度へと変更することを賛成多数で決定致しました。またこれに伴い、補完当座預金制度の適用金利および基準貸付利率の変更も決定しました。なお、浅田委員は、中東情勢の影響について、物価の上振れリスクよりも生産・雇用の下振れリスクの方が大きく、金融市場調節方針を据え置くことが望ましいとして反対されました。以下では、今回の金融市場調節方針の変更の背景にある経済・物価・金融情勢についてご説明します。まず、わが国の景気ですが、中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。すなわち、原油価格上昇は景気の下押し要因となっているものの、高水準の企業収益や雇用・所得環境の改善などが経済を下支えする方向に作用しています。この間、政府によるエネルギー負担緩和策を始めとする各種政策の効果が今後も見込まれることに加えまして、中東依存度の高い原材料の代替調達が進展していることなどから、経済が大きく下振れるリスクはひと頃よりも低下していると考えられます。
§3Shinichi Uchida
こうしたもとで、わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるという中心的な見通しに概ね沿って推移しています。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、政府によるエネルギー負担緩和策の効果などから、足元で 2%を下回る水準となっているものの、原油価格上昇を起点に、企業間取引における価格転嫁がやや早いスピードで進んでおり、これが今後、消費者段階における幅広い品目の価格上昇に波及していく可能性があります。こうした中、中長期の予想物価上昇率が引き続き上昇していることも踏まえますと、基調的な物価上昇率が 2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがあります。わが国の金融環境は緩和した状態にあります。実質金利は短中期ゾーンを中心にマイナスとなっています。企業等の資金需要は増加しており、CP・社債市場でも良好な発行環境が続いています。こうした経済・物価・金融情勢を踏まえ、本日の会合では、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断しました。政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えています。
§4Shinichi Uchida
今後の金融政策運営については、基調的な物価上昇率が 2%に近づいている中、現在の金融環境は緩和的であることを踏まえますと、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考え2ています。そのうえで、調整のタイミングやペースについては、中東情勢の展開がわが国経済・物価に及ぼす影響を注視したうえで、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら検討していく方針です。日本銀行は、2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から適切に金融政策を運営してまいります。次に、長期国債の買入れ計画についてご説明します。本日の会合では、市場参加者のご意見も参考にしつつ、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、今後の国債買入れのあり方について検討しました。その結果、月間の長期国債の買入れ予定額を 2027年1~3月までは原則として毎四半期 2,000 億円程度ずつ減額するという現在の計画を維持し、2027年4月以降は月間 2 兆円程度の買入れを行うことを賛成多数で決定しました。なお、田村委員は、長期金利の形成は、市場と市場参加者に委ねるべきであるとして、2028年1~3月までの月間の買入れ予定額を原則として毎四半期 2,000 億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決されました。
§5Shinichi Uchida
国債買入れに関する基本的な考え方は従来から変わりません。すなわち、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで行っていくことが適切であると考えています。このうち、予見可能性という点では、2027年3月までの月間買入れ予定額に加えて、27年4月以降の国債買入れ額や国債保有残高の先行き見通しを示すこととしました。柔軟性を確保する観点からは、これまでと同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額などを実施します。また、今後は、長期国債の買入れ計画の中間評価は実施しませんが、国債買入れの基本的な考え方や国債市場の動向等を踏まえ、必要な場合には金融政策決定会合において買入れペースを見直すこともあり得ると考えています。
§6Question
二問質問させて頂きます。まず一問目ですけれども、米国とイランが戦闘終結に向けて合意に達し、中東情勢を巡って緊張緩和の動きが出ております。 4月の前回会合の時点では経済に下方リスクがあることなどを踏まえて政策の現状維持を決定されました。今回の会合では、4月以降のどのような状況の変化を踏まえ、どのような要素を重視して利上げを決断されたのかお聞かせください。続きまして、二点目は今後の利上げのペースについて伺います。前回の利上げから6 か月の間隔が空きました。経済・物価情勢次第の面も大きいとは思いますが、今後も概ね同程度のペースで利上げを継続していかれるのか、あるいはインフレの懸念が強まればより短い間隔で利上げをすることもあり得るのか、お考えをお聞かせください。
§7Shinichi Uchida
まず一問目ですけれども、前回の会合以降の状況をみますと、中東情勢については、米国およびイラン双方が、戦闘終結等に関する覚書に合意した旨を発表するなど、様々な動きがみられており、これは望ましい動きというふうに言えると思います。もっとも、今後の物流の回復ペースなどを含めて、依然として不透明な状況は続い3ています。そのうえで、わが国の実体経済面をみますと、先ほど申し上げた通りですが、原油価格上昇が景気の下押し要因となっているものの、高水準の企業収益や雇用・所得環境の改善などが経済を下支えする方向に作用しています。この間、政府によるエネルギー負担緩和策などの効果が今後も見込まれることに加えまして、中東依存度の高い原材料の代替調達が進展していることなどから、経済が大きく下振れるリスクはひと頃よりも低下していると判断しています。こうしたもとで、わが国経済は伸び率を縮小しつつも緩やかな成長を続けるという中心的な見通しに概ね沿って推移していると判断しています。物価面では、足元の消費者物価の前年比は、2%を下回る水準となっていますが、原油価格の上昇を起点に、企業間取引における価格転嫁がやや速いスピードで進んでおり、これが今後、消費者段階における幅広い品目の価格上昇に波及していく可能性があります。
§8Shinichi Uchida
こうした中で、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることも踏まえますと、基調的な物価上昇率が 2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがあると判断しています。このように、前回会合以降、経済が大きく下振れるリスクが低下し、中心的な見通しに概ね沿って推移している一方、価格上昇の動きが幅広い品目に波及したり、基調的な物価上昇率が上振れていくリスクがあることなどを踏まえまして、本日の会合では 4月の展望レポートでお示ししていた金融政策運営方針に沿って、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断したところです。二問目ですけれども、これも先ほど申し上げた通り、今後の金融政策運営については、基調的な物価上昇率が 2%に近づいている中、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえますと、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。先行きの金利のパスや金融緩和度合いを調整するペースについては、当面は、引き続き中東情勢の展開が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響を注視する必要があると考えています。そのうえで、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、適切に判断していきたいと思います。
§9Shinichi Uchida
特に物価動向については、基調的な物価上昇率が 2%に近づいていることを踏まえますと、これを 2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になるというふうに考えています。
§10Question
今、お話が出ました基調の物価が 2%を超えるリスクがあるということで、日本ではなかなか 2%でアンカーされてないと思うんですけど、そのような中でやはりその 2%にアンカーされてない状況で、やっぱり 2%で基調を安定させたいのであれば早めな利上げが必要かと思うんですけども、一方で日本でよく言われる賃金スパイラルが起こらないとなかなか物価上昇に勢いがつかないという見方もありますけれども、その辺を含めてお願い致します。
§11Shinichi Uchida
2%にアンカーしていない中でどうやって 2%にアンカーしていくのかということと、賃金・物価スパイラルについてのご質問だったと思います。まず、基調的な物価上昇率を重視してわれわれは政策をやっているわけですけれども、この点、引き続き2%に向けて緩やかに上昇していると。そしてこのメインシナリオですね、中心的な見通しでは、今年度の後半から来年度にかけて物価目標と概ね整合的な水準になる4というのがメインシナリオです。ただ、最近の企業間取引の価格転嫁のスピード、それから中長期的な予想物価上昇率が、これは継続的にですけれども、上昇してきていること。こういうことを踏まえますと、基調的な物価上昇率が 2%を超えて上振れていくリスクにも留意する必要があると。これは今回の利上げの理由の一つでもあるわけです。それから賃金と物価のスパイラルにつきましては、賃金と物価が相互に参照しながら上昇していくということ、このメカニズム自体は人手不足の状況の中でかなり定着してきているというふうに思います。
§12Shinichi Uchida
ただ、それがちょうど2%になるのか、賃金の状況それから物価の状況は今後みていく必要があるというふうに思いますけれども、これまでのところ、ベアでいうと 3%台半ばぐらいで今年もほぼ決着しそうですし、それから例えば毎勤統計の定例給与なんかみてみますと、2%台後半から 3%ぐらいということで、概ね 2%の物価上昇に整合的なかたちで賃金が形成されていく、これがここ数年の流れになってきているという意味で、良いスパイラルというのはあまり使わない言葉かもしれませんけれども、物価と賃金が相互に参照しながら上がっていくというメカニズム自体はそれなりに定着し、かつそのことが 2%と整合的な状況にあるというのは、ここ数年の流れとしては良い方向の動きかなというふうに思います。
§13Question
今回の利上げの判断に当たっては、経済は中心的な見通しに概ね沿っているという判断、一方物価については基調的な消費者物価上昇率が 2[%]を超えて上振れるリスクを意識していると。この中心的なシナリオ達成の蓋然性が高まっていることによる利上げの側面と、リスクが高まっているということによる利上げ、両方あるように思うんですが、その辺のバランスについてどちらがより重きを置いたのか。また、今後の利上げを考えていくときにどちらがより重要になってくるのか、その辺りについての見方をお願いします。これが一点目です。二点目はそのリスクと関係するんですが、今後基調的なインフレが 2[%]を超えて上振れるリスクがあるということは、複数回の利上げが視野に入るということになるのか。一方で、中立金利に日銀の政策金利が近づいているということをどう考えるのか。中立金利に近づいていけばいくほど、金融環境等への影響を慎重にみながらゆっくり利上げを進めるべきという考えもあるんですが、一方で物価の上振れリスクも高まってるということであれば、市場がみているよりも早いペースの利上げもあり得る、このバランスをどう考えるのか、お願いします。
§14Shinichi Uchida
一点目は、今回いわゆる第1の柱、経済・物価のメインシナリオを重視したのか、あるいは第2の柱、リスクですね、物価上振れのリスクを重視したのかということですが、これはウエイトがどうこうというよりも、今日の決定会合に提出されている全ての情報をみたうえで、その二つ、両方の要素を勘案して決めたということに尽きると思います。どちらがウエイトが高いという性質のものではもともとないので、これについては両方だというのが答えになってくるというふうに思います。これはそのときに提出される情報によって決まってくるというのが今後の流れだと思います。5それから後者、中立金利についてですけれども、中立金利との距離感というのは、中立金利というものが推計可能であれば、あと 0.何%、何%ということを言えるわけですけれども、残念ながら最新の推計値をみても相当なばらつきがあります。以前どこかの講演で言ったことがあると思うんですけれども、金融政策の実践をしていく立場から言うと、これだけ広いレンジだとあまり使えないというふうに思っていまして、実際にはやはり短期金利を上げていく過程で、それを含めた金融環境の変化ということを点検して、中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくと、こういうやり方をしていくしかないかなというふうに思います。
§15Question
二問お伺いします。まず一点目、植田総裁の欠席についてお伺いします。植田総裁、今回書面での意見提出ということだったと思うんですけども、これがどのような内容だったのかを、可能な範囲でお伺いしたいのと、今回総裁欠席の状態で利上げを決めるということになったわけですが、振り返ってその総裁がいないことの影響を内田さんどうお感じになったか。また体調面で植田さんは不安はなくて、任期中は総裁を続けられるっていう理解でよいのか。ちょっと長くなるんですけど、同じ入院でも内田さん、こないだまで入院されてましたけども決定会合では投票権を持っていて、一方で植田さん、今回投票権がないということですけど、この差はどういった要因なのでしょうか。それが一点目です。二点目が今後の利上げについてなんですけども、お話で中東情勢の展開をみながらということでしたけども、米・イランは戦闘終結で合意したと伝わってですね、ホルムズ海峡も開放される見込みが出てきましたけども、その場合、その金融政策にはどう効くのかっていうのを端的にお伺いしたくて、経済下振れリスクが後退するので利上げを進めやすくなるのか、それとも物価上振れリスクは後退するので利上げを慎重に進めることになるのか。以上二問です。
§16Shinichi Uchida
植田総裁の意見の中身ということですが、これは金融政策決定会合の中身というのは主な意見、議事要旨、議事録という順番で公表していくということになりますので、この場で申し上げるということはできないと思いますが、大きな考え方は、これまで総裁から話していた通りですし、この前講演も行っていますので、想像はつく範囲かなというふうには思います。そのうえで、総裁が欠席している中での会合ということですが、もちろん議論をこれまでずっと主導してきている総裁がいないことについてはですね、寂しく思いますけれども、われわれは当然、組織として政策をやっているわけですので、そのことの影響ということは、これは基本的にはないというふうに思います。体調については、私と違って短期の入院ですので、大きな影響はないというふうに私は思っています。そのうえで中東情勢の方ですけれども、中東情勢についてはですね、そもそも今の動きは望ましいということは大前提としてですけれども、この後どういう展開になってくるのかっていうところから分からないわけですし、その中身によってですね、それは経済の方のウエイトが高いものとして表れてくるのか、物価の方に対する影響が大きいものとして表れてくるのか、これは慎重に見極めていく必要があるでし6ょうね。
§17Shinichi Uchida
そういう意味では、今日の段階では分からないけれども、今後影響する事象であることはほぼ、このままきちんと合意が実現していけばという前提が付きますけれども、重要な要素の一つになるというふうに思います。
§18Question
日銀ではですね、目標の達成時期につきまして 2026年度後半から 2027年度にかけてというふうにしておりまして、早ければ年内にもですね、目標の達成の可能性というのがあると思います。そのうえで、目標達成時期が近づいていることと、その段階で中立金利というものを標榜されるのであれば、今の利上げペースというのは果たして適切なのか、今後ですね利上げペースを遅らせる方がですねリスクが高いというふうなお考えはないのかということが一点です。もう一点なんですが、今回の声明で、為替のリスクにつきまして経済・物価に与える影響をみていくと、今までよりもちょっと踏み込んで書いてるんですけども、現段階よりもですね為替円安に行った方が、より輸入物価に与える影響大きいと思うんですが、今後為替円安が進んだ場合、二次的波及ですね、いわゆる物価の、そういったことになるリスクというのが高いとお考えか、この二点お願いします。
§19Shinichi Uchida
まず目標達成というか基調的な物価が 2%に達する時期ということですけれども、これは二人の委員の方が既に 2%になっているというふうに言っていますので、必ずしもコンセンサスがあるとまでは言えないと思いますが、大多数の委員は 26年度後半から 27年度にかけて、かなり広いレンジですけれども、その中に入っているということだと思います。その状況に実際に今の段階ではっきり分かってるわけではないわけですけれども、みんな予測ですけれども、それぞれの予測はその中の範囲に入っているということです。それに応じて、いわゆる中立金利に向けて緩和度合いを調整していくペースというのもですね、論理的には変わり得るということだろうと思いますが、今の段階では今後の経済・物価情勢次第ということに、これはなってくるというふうに思います。それから為替のリスクですけれども、為替についてはですね、これは常に、為替相場自体はわれわれのターゲットではない、目標ではないわけですけれども、経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つとして毎回議論しています。特に最近の会合ではですね、企業の賃金・価格設定行動が積極化していますので、過去に比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている。
§20Shinichi Uchida
更にそのことがですね、予想物価上昇率なり基調的な物価上昇率に影響する可能性がこれまでに比べると、メカニズムとして強くなっているということは意識していますので、金融・為替市場の動向、それからその物価への影響というのはですね、これは今後もしっかりみながら政策をやっていくということに尽きるかなというふうに思います。
§21Question
一点はですね、声明文の中にもありました、今回も金融緩和の度合いを調整することが適切である、政策金利の変更後も緩和的な金融環境は維持されるというような文言がございました。これまでも中立金利についてご質問がありましたが、このよ7うな金融緩和の度合いを調節するという政策金利の上昇について、このような説明というのはですね、いつまですることができるのか。例えば今年後半にも 2%に近づいていくとなると、こうした緩和的な領域から足を踏み出して中立的なところに近づいていく、こうした文言もいずれ近い将来使えなくなるというようなご認識でしょうか、教えてください。もう一点はですね、政府の経済政策との整合性についてお伺いします。高市政権は、国内投資の促進を掲げております。資金調達コストが上がる利上げは政府の経済政策と一致するのか。また、政府はガソリン補助金などですね、そうしたインフレ下で補助金を投入してますが、物価高を抑える利上げとガソリン補助金などの政策は整合的なのか教えてください。
§22Shinichi Uchida
まず前者ですけれども、これは先ほど申し上げたことに大体尽きているんですけれども、今の金融政策の運営についての考え方というのは、ある意味金融緩和が続いていることを前提に、金融緩和の度合いを調整していく、つまり中立的な水準になってくるまでの間のですね、方針ということにこれは論理的になるというふうに思います。ただその中立的な水準にいつ達するのかというのは、先ほど申し上げた通り、実際に利上げをしていく中で判断していくしかないだろうというふうに実践的には思いますので、それがいつになるのかというのは今の段階でわれわれは考え方を持っているわけではないということになります。従って、それは長い期間かかるかもしれないし、短いかもしれないわけですけれども、中立的な水準である、金融環境は緩和的ではないという状態になったときにはですね、それはこれまでとは違って、そのことを前提とした金融政策の方針っていうのはこれは出てくる必要があるということになってくると思います。それから、政府の政策との関係ということですけれども、政府におかれてはですね、中東情勢に伴うマイナスの影響が続く中で、原材料の調達を進めるということなどで景気の下振れリスクを回避するということ、それからエネルギーの負担緩和策などを通じて、物価高の悪影響が大きい分野に対するサポートを実施しているということだろうと思います。
§23Shinichi Uchida
加えて、おっしゃるように、中長期的な意味でですね、レジリエンスですとかあるいは中長期的な成長に資する投資を促進していくということをやっておられるわけです。今回のわれわれの決定はですね、原油高を起点とする幅広い品目の価格上昇、あるいは基調的な物価上昇率の上振れリスクに対応するために、緩和度合いの調整を行ったっていうことでありますので、わが国経済の持続的な成長の実現に資するということでありますので、そうした政府でやっておられることと整合的だと思います。なお、これはもう書いてあることですが、利上げの後もですね、わが国の金融環境は緩和した状態にあると判断していますので、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくことになるということですので、中長期的な投資という意味でもですね、これはサポートしているというふうに判断しています。
§24Question
二点伺います。まず、総裁不在下の役割分担についてお聞きします。今回の会合は8政策委員会の議長は氷見野副総裁が代理で務められ、内田副総裁がこの総裁会見を代理で担われています。日銀法に関連があると思うんですけど、議長と総裁職務の代理筆頭の方がそれぞれ担われていると思うんですけれども、そもそも二人の副総裁が分担して代理・代行されるものなのか、こういうことが通例なのかっていうのを伺いたいのと、また、この会見の位置付けとして、今、会合の議長としてお話しされているのか、副総裁ご自身の見方や考え方を述べられているのか。まああまり変わらないでしょう、特段こだわらないんですけれども、ご認識を伺えればと思います。二点目がですね、節目ですので熟知されている非伝統的金融政策について伺います。1年前の金融学会の講演でイールドカーブ・コントロールですとか、中央銀行のバランスシート運営の解釈とか見解に触れられた内容だったんですけれども、その結びの言葉で、自戒の念というフレーズを採用されて締められてました。この非伝統的な金融政策を振り返る際に、そうした言葉を使われた真意、こういう政策の出口を進めている観点も含めて伺えればと思います。
§25Shinichi Uchida
まず前者ですけれども、議長職については氷見野副総裁、それから総裁の代行については私が第一順位になっています。前者については、委員会の決定ですし、後者については総裁の決定ということになっています。通例なのかと言われると、例えばですね、前の体制では、確か雨宮副総裁が両方を第一順位だったと思いますので、毎回そういうわけではないので、そのときの総裁および政策委員会の考え方によるということだろうと思います。それから会見は、これは一応総裁会見で金融政策決定以外のことも聞かれますので、総裁としてということですので、代行は私がやっているということになります。それから、当然ですが私個人の考えを述べているわけではなくて、政策委員会で議論されたことを中心にお話ししているつもりであります。それから二番目は、これ明らかに私個人に対する質問だと思いますが、別に非伝統的政策だけについてですね、そういう言葉を使ったわけではなくて、実際この後ですね、例えばですけれども、通貨というものがですね、どう使われていくのかっていうことを考えていったときに、例えばデジタル化自体もですね、おそらく中央銀行の出すマネーというものに対して、われわれがどういう対応していったらいいのかっていうことを考えていくうえで重要だと思うんですね。それからバランスシートについてどう考えるのかとか。
§26Shinichi Uchida
あのときの講演は比較的技術的な内容を中心に述べているものですから、そういった点も重要である、そのことを理解したうえで、必ず中央銀行の出すものはみんなが信頼するっていうものではないのだと、それはアプリオリにそういうものではなくて、われわれの努力が必要なのであるという意味で自戒という言葉を使いました。
§27Question
今後の利上げのペースについてなんですけれども、実際、物価の想定以上の上振れリスクがある一方でアメリカとイランの合意もある中でですね、今後の市場で、これまで言われてきた半年に 1 回ペースというところはどのように想定されているの9かということと、現在ビハインド・ザ・カーブに陥ってるかどうかということについて、お考えを聞かせて頂きたくてですね、もしそうなっていないというのであれば、率直に、かみ砕いて分かりやすく説明して頂ければと思います。
§28Shinichi Uchida
前者についてはですね、一番最初の幹事問でお答えしている通りで、当然それは経済・物価・金融情勢を踏まえながら、特に当面のところは中東情勢ですし、その先について、あるいはそこを含めてということですが、経済・物価がオントラックであるか、その確度とかリスクをみていくということになります。特に物価については、上振れリスクも含めて判断していく必要があると。これは 2%にだんだん近づいてきている中ではですね、重要な要素の一つになってきているということかと思います。ビハインドというところについてはですね、引き続き政策金利を引き上げていく、その中で金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方をお示ししているわけですから、ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないようにですね、適切に運営していきたいというふうに思います。
§29Question
二点お伺いします。一点目は利上げの効果についてです。物価の上昇圧力が既に強まりつつある中、利上げをしても引き続き緩和的な金融環境は維持されると先ほどおっしゃいましたが、今回の 0.25%の利上げが過度な物価上昇を抑え、そして安定させるにどれだけ効果を発揮するのか、十分効果を発揮するとお考えなのか、あるいはもう少し金利を上げていかないとその効果自体発現しないというふうにお考えでしょうか。それから二点目は、利上げを判断するタイミングについてです。物価上振れのリスクは、前回の会合時点で既に複数の委員が指摘をされて、利上げの提案にも至っていました。日銀としての利上げの判断が、前回の会合ではなく、また次回の会合でもなく、今回判断することが適切だとお考えになった理由を教えてください。
§30Shinichi Uchida
一問目と二問目は関連するというふうに思いますけれども、当然ですけれども0.25[%]の利上げ、それ以降そのこと自体はですね、経済・物価には影響するというふうに思います。そのうえで方針に示している通り、利上げは続けていくということをですね、同時に述べているわけですから、その一連の政策の中で、当然物価を 2%に着地させていくということをやっていきたいと思いますし、今出ている情報のもとにおいては、今回の利上げが適切であるというふうに判断したということです。そのうえでタイミングですけれども、これは委員によって意見の違いがあることは一応前提としてお話ししますけれども、今回ですね、前回ではなくて今回利上げをした理由は先ほど申し上げましたけれども、経済の方の下振れリスクというのを同時にわれわれはみているわけです。当然物価だけをみているわけではなくて、物価と経済両方をみているわけですけれども、経済についての中東から来る下振れリスクがひと頃よりも低下したということが一つ大きな材料としてあります。
§31Shinichi Uchida
これは例10えば代替調達が進展していること、それから政府のエネルギー負担緩和策がかなり大きいものですし、今後も効果が出てくるというふうに思われるということが基本にあるというふうに思いますし、またこれは前回もそうでしたので今回特にということではありませんが、企業収益がきわめて高水準にあるということ、それから雇用・所得環境が改善していること、これらが経済のベースにあるということですので、何よりもですね、経済についての下振れリスクが低下しているということが前回と今回の間での一つの大きな違いだと思います。加えて、企業間取引物価ですね、国内企業物価ですけれども、これが上がってきているということも物価との関係ではリスクをより強く意識させる材料の一つにはなっているというふうに思いますが、これ自体はもともと予測されていることだろうと言われれば、それはその面はあるということですので、前回との違いということであれば、それは経済の下振れリスクが減ったということが一番大きいというふうに思います。
§32Question
二点伺います。一つは物価の上振れリスクの判断についてもう少し詳しく伺いたいんですが、中東情勢が戦争終結に向けて進展していて、原油価格も下落しています。先ほど物価が上振れるリスクがあるというふうにおっしゃっていましたけれども、今回の利上げも踏まえると、物価上振れリスクの度合いというのは 4月対比で小さなものになってきているのでしょうか。もし変化があるとすれば、それはどの程度の変化なのかお考えをお聞かせください。もう一つはですね、声明文の方の今後の金融政策運営のところなんですが、従来、実質金利がきわめて低い水準という文言がありましたけれども、今回これがなくなっているかと思います。これは、今までの利上げが重なってきたことで中立金利に近づいてきたとか、あるいは緩和度合いが弱まってきたということの判断の表れなのでしょうか。この変化についてお考えをお聞かせください。
§33Shinichi Uchida
度合いというのはなかなか難しいですけれども、物価上振れリスク自体はですね、声明文に書いた通り、あるというふうに思います。実際、企業間取引の先ほど申し上げた数字もそうですし、皆さんのニュースなんかをみていてもですね、消費者段階に、これは予告も含めてですけれども、幅広い品目で価格上昇のニュースというのが出てきているということですので、物価上振れリスクというのは、それなりに出てきているというふうに思います。そのことが、原油価格が下落することでですね、どの程度緩和されるのかは、これはこれからの判断ですね。既に原油が上がったことに伴う[価格上昇が]、今、川中段階まで来てますけれども、次、実際、消費者段階にどれだけ波及していくのかというのはですね、これは注意してみていくポイントの一つであろうというふうに思います。これが前回との度合いがどうかというのは、要するに予測の話なので、もともと予測していただろうという人も委員の中にはいると思いますし、われわれも別にそのリスクがないと思っていたわけではないので、程度というのはこれはなかなか難しいというふうに思います。人によって少しずつ違うかなというふうに思います。
§34Shinichi Uchida
それから、実質金利がきわめて低い、を今、緩和的な状態にある、に変えた部分の11ご質問ですけれども、これはですね、まさにそういう質問が毎回出てくることを考えるとですね、そこの議論をするよりも、よりロジカルに考えると、われわれは何で金融緩和の度合いを調整していくのかというと、これは実質金利あるいは政策金利の水準だけを考えているわけではなくて、金融緩和の状態全体として判断しているわけですから、そこは正確に書けばですね、まだ金融緩和の状態にある中で 2%に基調的な物価が近づいている、そういう中では利上げを実施することによって金融緩和の度合いを調整していくのだ、という方がロジカルであるというふうに思いましたので、そのように変えたということであります。そういう意味ではきわめてかどうか、というところの距離感みたいなことをですね、一つの文言の中で書いていくというよりは、金融緩和の度合い全体を評価して、それを説明する方がより適切ではないかというふうに思っているということです。
§35Question
それは、何か判断の変化があったというわけではなくて、説明の仕方を変えたということなんでしょうか。
§36Shinichi Uchida
説明の仕方ですね。そちらの方がよりロジカルだというふうに思うということです。
§37Question
物価安定目標の達成時期について教えてください。今回の見通しでもですね、26年度後半から 27年度という従来通りの記載だと思うんですが、今回の中東情勢に伴う物価上昇リスクの高まりというのがですね、方向感としてこの達成時期に対して基調物価の上昇を通じてより前倒しの方向感に影響を与えるものなのか、あるいはよりボラタイルになっているということで、後ろ倒しの影響を与えるものなのか、お考えを教えてください。
§38Shinichi Uchida
これは何とも言えないですね。実際、中東情勢というのは既に出てきているわけですけれども、その中にあっても、われわれはメインの見通しは変えなかったわけです。そういう意味では当然おっしゃるようにですね、達成時期を遅らせる要素と早める要素との両方が入っているということになるんだろうというふうに思います。また、今、中東情勢が一定の緩和をみているということがですね、今後どういう影響を及ぼしていくのかというのは、これは今後の政策を考えるうえで重要なポイントの一つかと思います。
§39Question
植田総裁の欠席された関係でちょっともう一点、お伺いしたかったのが、今回の植田総裁の議決権は行使されていらっしゃらないと思うんですけれども、内田副総裁が入院されていたときには電話会議というかたちで投票には参加されていたと思うんですが、今回、植田総裁が投票に参加されなかった理由についてお伺いできますでしょうか。
§40Shinichi Uchida
12これは治療の都合ということだと聞いています。
§41Question
今回利上げを決定したうえで、米国・イランの戦闘終結の見方、合意の締結の動きとかもある中で、3日の総裁の講演であったように、必要な対応が遅れて大幅な利上げを余儀なくされる状況、こういった恐れもあるっていう趣旨の講演があったかと思うんですけど、この大幅な利上げっていうのは現在もそういった可能性としてあるっていうところなのか。また、その大幅な利上げっていうのは 50bps とかそういったことも想定しているのかっていうのをお考えを教えて頂ければと思います。
§42Shinichi Uchida
必要な金融緩和の度合いの調整が遅れますと、物価上昇リスクが顕在化してその後の景気下押しにつながる恐れがある、それを避けるために後になって急速な利上げを余儀なくされることになれば、景気だけではなくて金融市場あるいは金融システムにも影響すると、こういう趣旨のことを総裁講演で述べているわけですが、これ自体は常にそうです。ある種の一般論です。もちろんそれは状況に応じて、そういう状況が現実のものとなったり、あるいは少し遠い話になったりするわけですけれども、今の状況を考えるとそのリスクということ自体は無視できない状況にあるということで講演でも申し上げたわけですし、今日の決定の中にもその趣旨が入っているということかと思います。
§43Question
内田さんは 1990年代に今はない信用機構局にもおられて、白川課長のもとで、財務省との交渉などにもあたられた経験がおありになると思うんですけれども、それであえて伺いたいんですけれども、万が一、金融危機といわれるような状況が生まれた場合にですね、中央銀行がすべきこととして重要なことは何でしょうか。緩和なんですか、それとも量的な緩和ですか、あるいは安心を与えるための声明を出すことなんでしょうか。
§44Shinichi Uchida
これは様々なやり方がありますし、実際に金融危機にあたっては、われわれ自身が資金を出したこともあるわけですし、それからこれはどこかの講演で言いましたけれども、一回目の量的緩和で流動性が出ていたこと自体はおそらく金融システムを維持するためにきわめて重要な効果があったというふうに思っています。そのことは、[多角的]レビューでも確か書いたというふうに思います。これは一概にいえません。つまり、金融システムの不安が起きるときというのは様々なルートで起きますので、起きたことあるいは海外で起きたのか国内で起きたのか、そういったことを含めて声明のようなもので片付くこともあるし、実際に資金を出さないといけないこともあるし、それから金融政策に影響するということもこれはやっぱりあり得るわけであって、必ずしも一つの答えはないというのが、答えになってるかどうか分かりませんけれども、私の考えです。
§45Question
日銀がETFの売却を始めてから半年となりました。この間の株価上昇の影響もあ13って、日銀のETFの保有額の時価ベースの推計値をみるとむしろ増えていて、東証プライム市場の時価総額に占める比率もむしろ上がって、むしろ日銀の株式市場におけるプレゼンスは強まっている印象すらあります。前の総裁の黒田さんは、将来のある時点でこのETFの売却のペースを加速してもいいのではないかという趣旨の発言もされていますが、ここまでの半年間のETF売却の現状および将来の売却ペース加速の可能性についてどのようなご見解をお持ちでしょうか。
§46Shinichi Uchida
現時点において今のペースを見直すということは考えていません。もちろん、今のペースだと 100年以上かかるということですので、どこかの時点で見直すということはあり得るんだろうというふうに思います。 100年このままだという意味ではないわけですので、それはどこかではあり得ると思うんですけれども、今の段階で特にその状況が大きく変わっているというふうに思いませんし、おっしゃった通りまだ 1年も経ってない話ですので、これは今後の課題にしたいというふうに思います。
§47Question
副総裁、今回のですね、1.0%への利上げは日銀にとっては 1995年以来の水準になるわけで、実に 31年が経過しています。ある意味で異常な金融緩和からですね、ここまで来るのに 31年かかったこの状況をですね、どういうふうに歴史的にみたときに評価されるかということと、ある意味で日銀が今苦労してですね、利上げをしている中で、政府はアベノミクス以来のですね、拡張的な財政政策、インフレ政策とも言えるものを続けてます。これは日銀のですね、政策とも逆行してるようにもみえるんですけれども、ここは政府の政策について、こうした拡張的なインフレ政策というのはここは脱却すべきではないんでしょうか。それについてどうお考えか。
§48Shinichi Uchida
まずですね、デフレ脱却は時間がかかったということですけれども、これ自体はデフレ心理というものが根強かったということが一番大きいですし、その中でですね、名目金利が既に低い中で金融緩和を追求していくことが難しかったという大きな背景があります。その中で私自身は、これは人によって意見違うかもしれませんけれども、大規模緩和によって雇用を創出し、人手不足という状態になっていった、そのことが今の経済・物価それから賃金両方が上がるという状態を作り出しているというふうに思いますので、デフレ脱却に効果があったと思います。それを効果があったので、次第に脱却していくということを今やっているわけであって、もちろんそれは経済に影響のある話ですので、順番に対応しているということに尽きます。それから財政については、これは政府と国会の責任と判断においてやっておられることですので、私からコメントすることはありません。
§49Question
4月の決定会合以降ですね、一時ちょっと為替介入の動きで円高になることもあったと思うんですが、それ以降円安が進み、先月には長期金利が上昇することもありました。市場が、日銀がビハインド・ザ・カーブに陥るっていう懸念をこれは示しているところがあると思うんですが、そこに対する考えにつきまして、今日利上げが実際に発表されてからも為替についてはあまり円高には振れず、じわじわと円安14になっていると思います。先ほど副総裁はビハインド・ザ・カーブにならないように政策をとるとおっしゃっていたと思うんですが、そこの市場の理解と政策の伝わり方のずれじゃないですけど、そこについてちょっと改めて聞かせてください。
§50Shinichi Uchida
日々の市場の動きについてコメントすることはありませんけれども、当然金融市場の状況というのは市場の参加者が考える経済・物価の現状と見通し、そのことに伴ってレート形成が行われるということですので、きわめて重要なインフォメーションを持ってると思います。そのうえで申し上げますけれども、われわれの政策は物価の安定ということのためにやっているわけであって、もちろん物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということを目的にやっているわけであって、その観点から、この後も金融緩和の状況を調整していくという考え方のもとでですけれども、ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないように、適切に運営していく方針です。
§51Question
国債の買入れ計画の決定についてお聞きしたいと思います。今回、27年4月以降 2兆円程度の買入れを行うという決定されてるわけですが、田村委員の提案は反対多数であって、2 兆円であると。この2 兆円であっても償還等によって減っていくということを資料でも示されているわけですが、一体この 2 兆円っていうのはどういう意味があるのか、多いのか少ないのか。一部にはですね、緩和を求める傾向のある政権に対する一つの配慮ではないかという見方もありますけれども、これは穿った見方でしょうか。
§52Shinichi Uchida
これは当然われわれ自身が、市場参加者の意見も聞いたうえで独自に判断したものです。そのうえで申し上げますけれども、減額した理由はですね、これ中でも書いてますけれども、国債市場の機能度はかなり着実に改善していて、ひと頃に比べて更に減額をしていくニーズというのは薄くなっていること、その中でわれわれが国債保有を減らしているわけですので、その代わり誰かが持つ必要があり、そのためにはですね、それなりの準備期間が必要になりますので、無理なく吸収していくためにはここで 2 兆円というぺースに落とした方がよいのではないか、それでも十分にバランスシートは縮小していくということで、目的は達するということになるというふうに思います。もちろん 2 兆円というのが必ず正しいのかどうかは、これは市場との関係で決まってくる話ですので、来年度以降の話になりますけれども、その中で、必要があればですね、これは見直していくということは前提としたうえで、今日のところは、これは 2 兆円で暫く続けてみようということを決定したというふうにご理解ください。
§53Question
国債買入れについてお伺いしたいと思いますが、先ほど、来年度以降必要なら見直ししていくというお話がありました。今後中間評価は実施しないで、必要な場合には金融政策決定会合において買入れペースを見直すこともあり得るとされていますが、このときの具体的な見直しの基準として、より例えば国債市場の、何でしょう、15構造的な変化ですとか、あるいは金融政策上の国債買入れの位置付けの変化ですとか、やはり 2 兆円の継続というのが今後は当面基本線で、見直しというのは可能性というのは低いのかどうか、この辺のお考えをお聞かせください。
§54Shinichi Uchida
2 兆円程度をどれだけ続けるのかということをですね、前もって決めているわけではないわけですけれども、今回 2 兆円程度とした理由、一つは今申し上げた通りですが、着実に市場の機能が改善していること、あるいは、一方で日銀に代わってですね、銀行とか個人といった本邦投資家が、われわれが手放している分を引き受けていくためにはそれなりの準備期間が要るであろうということ、こういったことはですね、それほど簡単に変わらないかなとは思います。ただ逆に言えば、これは変わっていく、例えば本邦投資家のポートフォリオの調整の進捗状況とかですね、そのもとで市場がどういうふうに反応していくかとか、そういったことによって変わってくる可能性はあるわけですので、予見可能性に配慮したうえでということに当然なりますけれども、必要があれば、今申し上げたようなことでですね、状況が変わってくればこれは見直すということは、これはあり得るんだろうというふうに思います。そういう意味で、今何かいつまで続ける、あるいはいつになったら見直すということがあるわけではないんですけれども、状況が変わればこれは政策委員会で予見可能性にも配慮したうえで変えていくということは、これはあり得るんだろうというふうに思います。
§55Question
今回初めて基調物価上昇率が 2%より上振れのリスクというのを理由にして利上げをしたかと思うんですが、これまでは基調物価 2%まで上げるというところを目指してこられたところで、副総裁冒頭に 2%近傍で安定した状態を保つという言い方をされました。フェーズが移行したという理解でよろしいでしょうか。
§56Shinichi Uchida
経済あるいは物価というものは常にそうですけれども、どこかで急にフェーズが変わるっていうことはあんまりなくて、これまで 2%に向けて緩やかに基調物価というのは上昇してきている。そのこと自体は変わっていません。だんだんと 2%に近づいてきている中で、上振れリスクというのをやはり当たり前のことですけれども意識しなければならなくなってきているということですので、フェーズが変わったというよりは、段階が進んでくる中でですね、こういったことがより重視していくべき状況が生まれてきているというふうに理解して頂いた方が良いかなというふうに思います。
§57Question
日銀の債務超過リスクについてお尋ねしたいと思います。2025年度決算で日銀の国債の利息は、つまり受取利息ですね、これと当座預金利息、これ支払利息ですけど、この差が 1,900 億円ほどの赤字になってます。つまりこれ、通貨発行益ではなくて、通貨発行損になってるわけですけれども、この状況についてどのぐらい日銀といいますか、内田さんは危機感をお持ちなのかということと、つまりこれは債務超過が近づいているということにもみえるわけですけれども、そのときのリスクをどうお16考えでしょうか。
§58Shinichi Uchida
これは一昨年(注)の後半にレビューを出すかたちでわれわれは試算値も出していますけれども、赤字の可能性あるいは更に進んで債務超過の可能性というのをですね、その中である程度判断しているわけです。その中では、債務超過のリスクっていうのはあまり大きくないということを述べているわけで、リスクとして非常に大きいというふうには思っていません。ただ、当然のことですけれども、財務の状況というのは重要ですので、そのことも含めたうえで判断していく必要は当然あるというふうには思います。ただこれはですね、量的・質的金融緩和のようなことをやった後に、これはやったときは儲かるんですね。その後にマイナスのフェーズが来るっていうこと自体はこれは最初から分かっているわけで、政策をやる以上ですね、ある種のコストとして、最初から分かったうえでやらないといけないし、私自身はそういうことも含めて量的・質的金融緩和っていうのは推進してきたつもりでいます。なお申し上げますが、中央銀行の財務の状況ってのは重要ですけれども、例えば債務超過の状況、あるいは赤字の状況というのは、欧米の中央銀行で既に生じているわけですけれども、そのことによって政策の遂行が妨げられることはないというのは、これはほぼ中央銀行界のコンセンサスではないかというふうに思います。
§59Question
私も国債買入れについてお伺いしたいんですけれども、今日日銀の方では、国債の保有残高がどういうふうになるかという見通しを声明文の中でも出されていると思います。これは何か大きなことがない限り、日銀としてはここまで国債の残高を減らせるというある程度の考え方のことなのかっていうことが一点。あともう一つ簡潔に。その一方で、日銀が利上げして国債の買入れの減額を止めるというのは、正常化とちょっとちぐはぐ、やってることがちぐはぐなんじゃないかという指摘があります。それで先ほど出ましたけど、財政への配慮なんじゃないかっていうところ、見方が市場の一部であります。その点について、内田副総裁お願いします。
§60Shinichi Uchida
まず保有残高の見通しですけれども、これは必ず 30年まで書いてましたっけ、そうするという意味ではないです。仮にそうであれば、そのような試算値になるという意味ですので、当然将来の政策をインプライするものではないということであります。そのうえで、今ですね、国債の買入れとそれから利上げの関係ですけれども、これは主たる政策手段は、今、短期の政策金利ということになっています。一方で国債の買入れ、これは既に買ったものの後始末の話ですので、できるだけ背景に落としてですね、政策的なインプリケーションはないようにやっているわけですので、この二つがですね、矛盾するということはそもそも建て付けとしてないということだと思っています。われわれ自身はですね、今回の国債買入れの方は、市場の参加者の皆さんの意見をよく聞いたうえで、最終的にはわれわれの判断で国債市場の安定17と、それから機能度、両方をバランスした水準として 2 兆円程度を続けるのがよいのではないかというふうに判断したということであります。
§61Question
今日のご回答にもビハインド・ザ・カーブにならないようにというお話がありましたけれども、今回の会合では、審議委員から、既にビハインドになっている、リスクが高まっているという指摘はありましたでしょうか。またそれにあわせて、今回の利上げ幅を 50bps にすべき、利上げペースを引き上げるべきだという具体的な意見や検討というのはあったのでしょうか。
§62Shinichi Uchida
[決定会合の]中での意見についてはですね、これは主な意見その他で示していくということになります。なお、50bps の提案はありません。
§63Question
国債買入れについて伺います。国債買入れというのは日銀のバランスシート運営と不可分なことだと思います。現在、約 660 兆円ある日銀のバランスシート規模をどこまで縮小するのが適当とお考えでしょうか。いつまでにそのバランスシートのゴールを定めるというのが適切だとお考えでしょうか。
§64Shinichi Uchida
長い目でみるとですね、どこかでは適切なですね、バランスシートの規模、あるいはその中身というのは、これは負債側・資産側両方ですけれども、検討していく時期というのが来ると思います。これは欧米の中央銀行などでは、既に議論もされているということだと理解しています。ただ、わが国の場合ですね、あるいはわれわれの場合、きわめて大きなバランスシートを抱えていて、これを国債市場に混乱をもたらすことなく減額していく、まずまだそのフェーズにありますし、そのフェーズの中で今議論をしているので、まだ少し先になるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。先ほどの質問にもありましたけれども、30年まで出してみてもですね、あそこに書いてあるパーセンテージぐらいしか減らないわけですから、まだ少しその議論をするのは早いかなというふうに思います。これはいずれですね、きちんと議論していく必要があると思いますし、先ほど質問して頂いた私の金融学会での講演の中でもですね、少し詳しく述べてますのでそちらもご参照頂ければというふうに思います。(注)会見では昨年と発言しましたが、正しくは一昨年です。以上