佐藤審議委員就任記者会見(2026年6月30日)
全文
§1Question
二点質問させて頂きます。まず一点目です。中東情勢を巡って緊張緩和の動きが出ている一方、原油高の価格転嫁は今後本格化していく見通しとなっております。日本の経済・物価情勢に関する佐藤委員の基本的なご認識をお聞かせください。二点目です。日銀は今月の金融政策決定会合で 1%への追加利上げを決定しました。これが適切な判断だったと受け止めておられますでしょうか。ご評価をお聞かせください。また、日銀は今後も金融緩和の調整を続けていく方針ですけれども、どのようなスタンスで今後議論に参加していかれるお考えでしょうか。
§2
中東情勢を巡り、緊張緩和の動きが出ていることは良い方向の動きだと思いますが、まだ不確実な要素も残りますので、今後どのように進んでいくのか、あるいはその進みがですね、経済・物価情勢についてどのような影響を与えるのか、あるいはご指摘のようにですね、原油価格がどのように物価に転嫁されていくのかということは、引き続き注意深くみていくべきだと思っております。いずれに致しましても、私は今日審議委員を拝命したばかりですので、次回の会合に向けてしっかり準備をしてまいりたいと思っております。二点目につきましては、本日審議委員になったばかりですので、この場においてはですね、今回の政策決定会合で決まった内容について、および私の政策スタンスについては、コメントは差し控えたいと思います。まずは、次回会合に向けて、内外の情勢あるいはサーベイデータやヒアリング情報なども含めて参考にしながら、私の経済・物価情勢についての分析を深めて、次回の会合でしっかり議論していきたいと考えております。
§3Question
二点お伺いします。一点目は政府と日銀のポリシーミックスでお伺いしたいんですが、高市政権は責任ある積極財政を掲げておられてですね、それを踏まえてですね、金融政策は緩和的な状況を維持して景気を支えることが重要とお考えか、それとも物価の安定を優先してですね、物価上振れリスクには積極的に対応するべきとお考えか、このポリシーミックスについてお伺いしたいのが一点目です。二点目なんですが、外国為替市場でですね、ドル円相場が 162 円で取引されるなど円安が進行しておりまして、佐藤委員はですね、ここからの円安が日本経済にどのような影響を与えるのか、プラスかマイナスなのか、そちらどういうふうにお考えかというこの二点お願い致します。
§4
一点目のポリシーミックスに関しましては、財政と金融それぞれの役割分担が重要ではないかと考えております。金融政策は物価の観点から、基調的な物価動向を注視し、財政政策はその影響を受ける家計や企業の支援が中心になるというのが基本的な考えではないかと考えます。ただし、具体的な対応については、それぞれのそのときの経済情勢によって判断されるべきものなので、現時点では特定のポリシーミックスの組み合わせについては申し上げるのは適切ではない、というふうに考えております。二点目につきましては、円安(注)の影響に関しましてはですね、一般論で申し上げますと、円安に振れることはですね、輸出企業の企業収益あるいはインバウンドの需要の増加によるプラスの影響もある一方で、輸入物価の上昇を通じて、家計のですね、実質所得の減少、あるいは中小企業の負担増などのマイナスの影響もございます。昨今はですね、企業の賃金や、あるいは価格の設定行動が積極化しておりますので、以前と比べますと、為替の変動が物価に影響を与えることが大きくなる可能性もエビデンスとして多少出てきている可能性があります。ですのでそうした動きがですね、予想物価上昇率を通じて基調的な物価上昇率に影響を及ぼす可能性を留意して、今後、為替動向についてしっかりと見極めていく必要があるのではないかと考えております。
§5Question
私も為替動向についてお伺いします。最近の円安も含めてですね、日銀の会見の中では為替が金融政策の決定に占める影響度合いというのが高まっているというような認識も示されているかと思います。この為替の現状の円安が、政策運営のうえでどのようにみていくべきなのか、そのお考えについて現時点であるものがあれば教えてください。
§6
まずは、為替の水準あるいは評価については具体的なコメントは差し控えたいと思います。そのうえで、為替相場は、短期的な大きな変動というのはよろしくないと思いますけれども、金融あるいは経済のファンダメンタルズで決まるべきものだと一般論として考えられます。金融政策に関しましては、先ほども申し上げましたけれども、為替の変動が物価に影響を与える可能性もありますが、日本銀行としましては 2%の物価安定目標の持続的・安定的な達成、これが目標ですのでそのように考えておりますが、引き続き為替動向あるいは物価の動向については、しっかりと慎重に見極めていく必要があると考えます。
§7Question
二点お願いします。まず今の日本が置かれてる状況はインフレのリスクと経済の下押しのリスクと二つあるんですが、拙速な利上げによって経済の腰折れを招くリスクとインフレに対してビハインド・ザ・カーブになってしまうリスク、日本経済にとっては今どちらのリスクがより大きいというふうにお考えでしょうか。これが一点目です。二点目については、異次元緩和およびその出口についての評価なんですけれども、その評価を踏まえたうえで、今の日本っていうのはデフレ、インフレどちらなのか、企業や家計のデフレノルムって言われたものはもう解消されたとみていいのか、その点についてお願いします。
§8
まず一点目につきましては、現在の中東情勢の影響で原油価格が一時的に水準が上昇したときがありまして、それが物価を押し上げる一方で家計や企業の負担増を通じて景気の下振れリスクが存在したということです。その両方ですね、景気の下振れリスクとインフレの上振れリスクの双方に注意が必要であることは重要なこと、注視していかなくてはならないのだと思います。そのうえで重要なのは、金融政策としては原油価格の上昇によるインフレリスクが、一時的なコストプッシュの影響によるものなのか、あるいは賃金やインフレ期待を通じた持続的な、あるいはディマンドプルのインフレなのかというのを見極めて、金融政策を適切に運営していかなければならないと考えます。いずれにしましても、その二つのリスクのどちらが大きいかというのが現時点では断定的には申し上げられないような状況ではないかと私は考えております。二点目につきましては、出口についてですが、現在、日本銀行は金融政策の正常化を行っているところではございますが、インフレかデフレかと申し上げますと、多少のインフレ上振れリスクというのは観察されるところがあるかもしれないですが、まだノルムとしてはそれほど強いものではないのかなというふうなところですが、引き続き事務方の説明もよく聞きまして、私なりにデータを精査して考えていきたいと思っております。
§9Question
二点お伺いします。まず一点目、現状の政策金利についての評価なんですけれども、この間の決定会合で 1%まで上がりました。こちら欧米の政策金利に比べると依然低いですけれども、水準自体は 31年ぶりということで、これ、1%でもまだ緩和的と佐藤さんは評価されますかというのが一点目です。二点目は、佐藤さんご自身の評価、認識についてなんですけれども、審議委員就任、浅田さんと並んでですね、同じタイミングで出まして、その際に浅田氏と並んでリフレ派だという評価だというふうに言われていますけども、そうした評価についてご自身どう思われてるか、お聞かせください。
§10
政策金利は、政策金利が中立金利を下回れば緩和的、あるいは上回れば引き締め的というふうに一般論としては考えられます。しかしですね、中立金利自体が直接観察されるものではなくて、推計ベースなわけですね。日本銀行で推計した値もレンジがかなり広いものなので、緩和的なのか引き締め的なのかっていうその基準が曖昧なわけで、どちらというふうに言うのはなかなか難しいものだと思いますが、今後はですね、様々なデータをですね、総合的に勘案して評価していきたいと、そのように考えております。二点目につきましては、いわゆる、私のことをですねリフレ派というふうに言われていることは承知しております。しかしながら、私自身は自分の立場をですね、特定の考え方やあるいは特定の学派に規定したつもりはございません。研究者としては、心掛けていたのはですね、経済理論とあるいは計量経済ですかね、を適切に使用すること、あとはデータあるいはデータにまつわる分析に関しては丁寧に、先入観を持たずに分析することを重視してまいりました。今後もですね、スタンスとしては同じように、データをしっかり丁寧に素直に、何かいろんな学派とかいろんな考え方にとらわれずに読んで、そして日本経済にですね、発展に資するように邁進していきたいと、そのように考えております。
§11Question
二点あります。先ほどの質問で物価上昇について、そこまで強くないのではないかというふうな趣旨の発言だったと思うんですけども、そういうふうに考えられる根拠を伺えますでしょうか。二つ目がですね、市場の中でも長期金利の上昇について、日銀が利上げするから長期金利が上がるんだという市場関係者もいれば、日銀が将来ビハインド・ザ・カーブに追い込まれてですね、それで利上げを迫られるんで長期金利が上がってるんだという、インフレの懸念があるからという見方があるんですけれども、経済学者としてですね、その辺の長期金利の上昇と政策金利の関係をどのようにとらえてらっしゃるか伺えますでしょうか。
§12
一点目の質問に関しましては、足元のやっぱり消費者物価指数などなどについてはあまり高くない、ただし、将来のインフレ期待がですね、強くなってる可能性があるっていうことで、今後ですね、私も審議委員に就任したばかりですので、これから事務方の説明もよく聞きましてデータを精査して、次回の決定会合でしっかり議論していきたいと思っております。二点目の質問に関しましては、長期金利の急騰というか上昇についてなんですが、長期金利は金融市場で形成されるのが基本であると考えます。しかしながらですね、経済あるいは内外の経済であったりとか、あるいは海外の長期金利や金利に引っ張られてですね、ある程度変動していくものであるというふうにも考えております。でもそのうえで、政策金利が影響を与える、上昇するのかあるいは下落するのかっていうのは、やはりインフレ期待あるいは将来の経済情勢に対して政策金利が与える影響が長期金利に反映しているのではないかと考えます。
§13Question
履歴書類拝見しますと、家政学部を卒業されて、QUICKに入社されて、その後経済学の分野で多様な環境でキャリアを積まれていますが、金融政策の判断に対して、こういう経験ですとかをどう活かしていきたいのか。また、何を期待されて任命されたと思われているのか、伺えればと思います。あと関連でなんですけど確認も含めてなんですが、専門分野を教えて頂ければと思います。
§14
私は大学教員として、あるいは研究者として、20年以上ですね、国際金融あるいはマクロ政策を中心に研究してまいりました。そこでは先ほど申し上げましたけれども、経済理論と実証分析、両方とも理解して適切に使用することを心掛けてやってまいりました。二点目に関しましては、何を期待されてるかっていうことですかね。
§15Question
ご自身のキャリアを踏まえてというところで。
§16
専門が国際金融あるいはマクロ政策であったっていうことと、あるいは、データを扱うことが多かった、実証分析がやっぱり専門だったので、データを丁寧にみる、そういった分析力とかが金融政策の場で役に立つのではないかとそのように私自身は思っております。
§17Question
二点お願い致します。一点目、高市政権となって指名された二人目の審議委員となられるかと思いますが、高市政権から求められている期待されている点というところをどのように認識をされているのか。また、金融政策の独立性についてどのようにお考えかというところを教えてください。二点目が黒田元総裁の大規模金融緩和についてどのように評価されているのか、成果と副作用の両面のそれぞれ教えて頂ければ幸いです。
§18
一点目につきましては、特に高市総理から何か特別な指示があったわけではございません。しかしながらですね、高市政権は強く豊かな日本列島ということでスローガンを掲げておりますので、私も物価の安定を通じて日本経済の発展という目標を持って日本銀行の仕事をしていきたいとそのように考えております。独立性に関しましては、日本銀行法で第 3 条ですかね、日本銀行の通貨および金融の調節における自主性は尊重されなければならないと明確に定められておりますので、そういう意味でいうと、現在の 2%の物価目標を守っていくことっていうのが一番重要なことではないかというふうに考えております。二点目のですね、大規模緩和についてなんですが、私はアベノミクスの大規模緩和に関しては一定の効果があったのではないかと考えております。一つは雇用の改善、二つ目で株価も上がりましたし、あとはいろんな指標がですね、アベノミクスのところから上がっていくことが観察されるので、一定の評価をしてはいいのではないかと思います。一方で、物価安定目標っていうのが 2013年の 1月からですかね、日本銀行と政府の共同声明に盛り込まれていたのですが、2%の目標が達成できなかったということに関してはマイナスの評価になるのかと思います。
§19Question
今の日銀は基調的な物価上昇率をみながら段階的に利上げに取り組む方針を示しています。佐藤委員は基調的な物価上昇率は今どのくらいの水準にあると考えていらっしゃるのでしょうか。また、次、利上げをした場合は、日銀の推計する中立金利の下限域に入ると思うんですけれども、もしその場合、次の利上げに対する考え方を教えてください。
§20
まず基調物価についてはですね、中立金利と同じように金融政策を考えるうえでは非常に重要な概念だとは思いますが、やはりこれも直接観察できるものではないので、推計ベースになってしまうと。日本銀行の推計でもいくつかの方法やモデルに基づいて推計されていますが、どれも一長一短だというふうに [日銀]レビューにも書いてありましたので、そう簡単にですね、基調物価を推計したもので、政策運営に使えるのかというと、なかなか難しいところがあると思いますので、いろんな様々な他の経済データもみながら、基調物価については判断していかなくてはならないのではないかと、そのように考えます。二点目の今後の利上げについてはですね、私に関しましては、本日辞令を受け取ったばかりですので、事務方の説明をよく聞きまして、内外のデータも私なりに精査しましてですね、次回の決定会合で建設的に貢献できればと考えております。
§21Question
中立金利の評価については難しいということなんですけれども、これまで日銀というのは正常化っていうのを進めてきてですね、その中で中立金利っていうのがどこか分からない中で、貸出がどうなってるとか、経済がどう反応してるのか、物価がどう動いてるかそういうところでみていくっていうことが一つだと思うんですけれども、そこの点については要するにこれまでの利上げ、正常化によって何らかの悪影響が出ているのかどうか、その点についてまず一点。あと為替の話に戻ってしまうんですが、数年前の勉強会の講演でですね、金融緩和の効果として為替が円安に行く、それで好影響を経済に与えるっていうことをおっしゃってたと思うんですけれども、今は経済の状況というのはそのときと比べて変わってきているのかどうか、その点お願いします。
§22
一点目の質問に関しましては、金融政策の正常化を行う過程でいろいろな波及効果が各経済[主体]に出ていることは事実なのかもしれないですが、今後もう少し私も事務方の説明を聞いてしっかり勉強していきたいと思います。また二点目につきましては、過去には研究者として様々な見解をいろいろなところで申し上げてまいりましたが、それらは当時の分析に基づくものなんですね。為替については特に日本銀行の所管ではございませんし、現在の私の審議委員としての立場としてはコメントを差し控えたいとそのように思います。
§23Question
二点お伺いしたいんですけれども、以前の YouTube 番組で、ベンチャー育成の観点から高圧経済が必要なんではないかというお話されていたんですけれども、現時点の委員の考え方、高圧経済にしていく必要性についてどうお考えかお聞かせくださいというのが一点目。二点目は、日銀の保有ETFの処分についてですが、日銀としては今年1月から売却を始めているんですけれども、簿価ベースで年間 3,300 億円程度の売却ペースでして 100年かかるという計画なんですが、佐藤委員としてはこの売却ペースというのを今の市場動向を踏まえて、もう少し加速した方がいいとか、そのお考えおありかどうかお聞かせください。
§24
まず一点目につきましては、先ほどと同じ答えになってしまうんですが、研究者としていろんなところでですね、いろいろな見解を申し上げてきました。しかしながらですね、それは当時の分析によるものなので、現在の私の立場としてはコメントを差し控えたいとそのように思います。二点目のETFに関しましては、これについても、市場の動向や、やっぱり参加者のですね意見を十分に踏まえながら、予見可能性を確保しつつ進めていくべきではあると思いますが、規模に関しましてとかスピードに関しましては、今後、事務方の説明をいろいろお聞きしまして、私としても経済データをしっかりですね分析を深めてやってまいりたいと、そのように思います。
§25Question
一点お伺いします。政府は高市内閣が掲げる危機管理投資あるいは成長投資といった取り組みについて理解のうえで日銀として適切な政策を実行してほしいとしていると思います。日銀が現在示している利上げを続ける方針というのは、企業に投資を呼びかけるに当たってどのような効果あるいは影響を及ぼすとお考えでしょうか。お願いします。
§26
まずはですね、責任ある積極財政についてはですね、財政運営についての話なので、政府や、あるいは国会の判断によるものでありまして、日銀の所管ではないと考えますので、これについてはコメントを差し控えたいと思います。そのうえで、利上げが高市政権の目指すべき財政政策との兼ね合いについてですが、これもですね、様々な考え方があると思いますけれども、今後ですねもう少しですね、事務方の説明を聞きまして考えていきたいと、そのように思っております。
§27Question
物価情勢をどうご覧になっているのかというのを一点伺わせてください。先ほどのご発言の中で、基調的なインフレについて、まだノルムとしては強くないといったような趣旨のお話だったと思うんですけれども、逆にデフレに逆戻りして景気低迷に再び陥ってしまうリスクっていうのをどれくらいお感じになってらっしゃいますでしょうか。また、そうなるリスクがあるとしたら、どんな経済的条件が重なったときにそう陥る可能性があるとご覧になってますでしょうか。
§28
まず一点目につきましては、先ほども申し上げましたが、足元の消費者物価指数などはあまり強い値ではないかと思いますが、企業物価であったりとか、あるいは日銀推計の物価については、わりと強い値が出ているということで、いろんな物価指標がありますので、そういうのをですね、総合的に勘案して判断していかなければならないんだなというふうには考えております。二点目につきましては、ノルムについて強くないというか、デフレに陥るリスクっていうのは、私の方からはコメントはですね、差し控えたいと思います。今後、日本銀行の優秀なスタッフのもとでいろいろ説明を聞きながら、自分の判断を作っていきたいとそのように考えております。(注)会見では円高と発言しましたが、正しくは円安です。以上