増審議委員記者会見(2026年9月10日)
全文
§1Question
幹事社からは二点ございます。まず一点目に、本日の懇談会でですね、福井県内の経済金融情勢、そして日本銀行の金融政策について、出席者からどのような意見や要望が出されたのか、また特に注目された点があればお聞かせください。続いて二点目に、足元の福井県経済についてですね、どのように評価されているのか、また今後の見通しや特に注視している点についてお聞かせください。
§2Kazuyuki Masu
ありがとうございます。まず最初に、先日の大雨で被害に遭われた方々についてお見舞いを申し上げたいと思います。少しでも早く復旧が進むことを祈っております。本日の懇談会ですけれども、行政、経済界、金融界を代表する方々から、課題、現状等について、更に日本銀行に対するご要望についてもお伺いできて、非常に様々なご意見を頂けて、非常に有意義な時間を過ごせたと思います。改めてですけど、この場を借りてご出席頂いた方々に御礼を申し上げたいと思います。それでですね、確かに今日は非常に有意義というか面白いお話もいっぱい頂けたので、全部ご紹介しているとこの記者会見の時間が終わってしまいますから、かいつまんで全体の要約みたいなかたちでお話をさせて頂きたいと思います。伺った印象では、福井県の景気としては、全体にいい方へ回復しているというような印象を受けました。特にイランの問題でですね、物のいわゆる目詰まりということが、もともと最初は心配されたんですけれども、現時点ではかなり解消しているというお話も伺いましたし、それは良かったなと。ただし値段は、もうどうしようも、やはり上がっているというお話でした。一番の問題はやはり、これはどこに行っても一緒なんですけれど、人手不足の話が当地の企業が一番直面している問題ということで伺えたと思います。
§3Kazuyuki Masu
そういうことも踏まえてですね、日本銀行に対しては、できる限り地方の事情にも目配りをしてほしいというお話を伺ったんですが、そうした中でもですね、これは、県民気質なのかどうか分かりませんけれども、こういう状況もですね、あまり悲観的にとらえずに、粘り強く前向きにとらえようというお話が結構あったので、なかなかすごい方々だなと思って、さすが幸福度一番の県だなと思って伺っていました。行政の方々からも、楽しくというキーワードがあるとおっしゃっていたので、非常に印象的だったなと思います。私どもとしては、中央銀行の立場から、物価の安定と金融システムの安定を確保することを第一として、当地の関係者、われわれの方の関係者も使って頂いてですね、皆さまとの間で成果が上がるようにサポートしていきたいなと思いました。2それから次の、県の経済についてですけど、経済は緩やかに回復しているというかたちで伺っております。いろんな、中東情勢もありますけれども、自然災害も受けながらですね、全体にしっかりしているというふうに私どもは受け止めております。これから更に回復を目指すうえではですね、物価高もそうですし、このような自然災害に対する耐性というのがこれから試されていくという、そういう局面にあるのかなと思います。私どもの金沢支店・福井事務所との意見交換・交流を通じてですね、できる限りよくみてまいりたいなと思っております。
§4Question
二点あるんですけれども、講演の中で、中東情勢の緊迫化から来るいろんなコストの上昇、特に物流のコストの上昇がいろんな物の価格を押し上げる可能性が、しかもそれが結構定着するかもしれないとのご指摘があったんですが、基調的なインフレ率が 2%を大きく超えるリスクというのは現下高まっているというふうにみていらっしゃるのか、これが一点目です。あともう一点、講演の中で指摘されていた実質金利のマイナス、もうデフレではないのでなるべく早く解消すべきとのご指摘なんですけれども、そう考えた場合には、まだ中立金利まで少し政策金利、距離があるとすれば、例えば、50 ベーシスといった大幅な利上げというのは選択肢に上るのでしょうか。その辺りのお考えをお願いします。
§5Kazuyuki Masu
一点目ですけれども、資料をお読み頂いてありがとうございました。私も、食べ物と並んで物流コストというのが基調[物価]に影響を与えるというのは非常に気にしている部分ではあるのですけれども、今のご質問にあったような、基調についてはもうそろそろ[2%に]届くかなと思いますけれども、大きく超えるというような状況が今みえるわけでもありませんので、ここから大事なことは、うまく 2%に届いたら、そこにうまく安定させていくというのが一番の課題だというふうに思ってますので、それが今の状況かなと思ってます。それから、中立金利の話、必ず聞かれると思ったんですけれども、いくらなのか分からない話ですけれども、これも今のお話と同じですので、その都度じっくりみながらですね、やっていく部分ですから、特別におっしゃったようなかたちで対応するというようなことになるのか、それもちゃんとみながらでなければいけないんですけれども、今までのかたちで、慎重にみていくというかたちで進むことになるかなと思っています。
§6Question
今の質問とも関連するんですけども、午前の講演で、政策金利をですね中立金利の推計レンジにしっかりと入れることが必要であると、そういうご趣旨の発言されたんですけども、このしっかりのですねイメージなんですが、日銀の推計だと1.1[%]から 2.5[%]ということなんですけども、例えばですね、レンジの中央とかですね、増さんとしてそういうことぐらいをちょっと大体イメージしているのかど3うかということが一点目です。関連で、次に利上げをする場合って、25 ベーシスであれば 1.25%なわけですが、先ほどの発言の趣旨から考えると、1.25[%]でも引き続き緩和的な局面にあるように増委員は思っているんじゃないかというふうにちょっと感じたわけですけども、この二点よろしくお願い致します。
§7Kazuyuki Masu
さすがにこの辺り、皆さまから厳しい質問が来ますので。まず、中立金利、必ずこういうお答えになっちゃうと思うんですけど、どこが本当に正しいのかはやっぱり分からないものですし、イメージについてはやっぱり申し上げない方がいいと思ってますから。全くこの仕事ずっとやってて何も頭の中で思い浮かばないかといったら、そういうことはないんですけれども、どれくらいというのはやっぱり申し上げるべきじゃないと思いますので、イメージについて、持ってませんと言ったら何か何もしていないようにみえますので、そうではなくて、下手なかたちで言わない方がいいかなというふうに思ってます。しっかり入れるという言葉はですね、まだ、まだ下にいるんですよね。日銀自身が示しているレンジの中にまだ下にいるっていう、しかも随分長いこと下にいて、しかも主要国では日本だけが下にいるということについて、ちゃんと早く解消したいというところが言葉になって出ているというふうにご理解頂ければいいかなと思います。それと同じ意味で、次いつ上がるか分かりませんけれども、1.25[%]になっても緩和的かというのは、それはこれもそこでやっぱりみてみないと分からないことですので。少なくとも中立金利、あんまりこれを使うといけないなとは思いつつ、推定のレンジではありますけど、それなりにでも苦労して出した数字で、ちょっと広いレンジです。
§8Kazuyuki Masu
広いレンジの中にまだそこにいないというのがやっぱり不自然な状態だったわけですから、不自然な状態はどうみても緩和であって、不自然でない状態にとにかくする。したうえでじゃないとちゃんとした施策に持っていけないということを、[推定レンジの]中に入れることによって、上げる方でも下げる方でもちゃんと機動的にできるということがすごく大切だと思ってますので、そういう考え方でみていくことになるかなと思います。
§9Question
利上げのペースの加速についてお伺いしたいんですけども、植田総裁は 7月の決定会合の記者会見で可能性について言及してまして、市場予想は現状 9月、次回会合での利上げは 98%という予想なんですけど、加速の必要性について増審議委員がどのようにお考えかということをお聞きしたいのと、その際なんですけど、もし仮に加速する場合、日銀は本来ですね、中立金利に近づけば近づくほど慎重に利上げするという方針だったと認識しているんですけども、それにもかかわらず加速するのであれば、中立金利が更に上に行っているか、もしくはビハインド・ザ・カーブかという見方になると思いますし、マーケットもそう反応する可能性が高いと思うんですけど、その点はどういうご見解かも併せてお聞かせください。
§10Kazuyuki Masu
4このペースの加速という言葉がですね、ちょっと総裁が言った答え方がどの文脈だったかまでは思い出せませんけど、7月の段階での記者会見ですので、皆さまが散々噂されている 9月ということでも加速は加速ですし、その先の話をしたとはあまり思えないんですけど。単刀直入に来週の会合でどうするかということですと、これはもう今の情勢、為替は円高には行ってますけれども、原油の価格、残念ながらまた上がってますし、それから時々報道頂いてますけど、国際的な食物の価格が、小麦ですとか大豆なんかも結構上がってるんですね。ウクライナのときと一緒で、またこういうのが影響してきますから、こういうことをよくみながら、でも為替はこうだというのを全部細かく点検しながら、会合はまだ来週ですので、そこまでにきっちりと検証して、しっかりと次の会合で議論することになると思います。
§11Question
今の日経新聞さんの質問に関連するんですけれども、利上げペースの加速もあり得るんじゃないかというふうな話がここ最近市場の方では出てきてます。これは、今、審議委員の方がおっしゃっていた、9月に利上げしたとして、その後の話でもあると思うんですね。要はこれまでは概ね半年に 1 回程度のペースで、結果的にですけども、利上げがされてきていて、もしかしたらこの後仮に 9月に利上げがあった場合は、半年もかけずに、例えば 3 か月後の会合でとかで利上げがあるんじゃないかというふうにも言われてます。一方で、これまでの日銀の皆さんのスタンスとしては、1 回利上げする度に経済や物価に与える影響を慎重に見極める時間が必要なんだということだったと思います。それが結果的に半年ということになっていたと思うんですけども、これが例えば 3 か月とか半年よりも短いレンジになった場合に、経済や物価への影響を見極める時間としては短くなるわけなんですけども、それでもそういった検討は可能になるものなのかどうかという点について伺えればと思います。
§12Kazuyuki Masu
非常に難しいご質問だと思うんですね。まず、来週の会合はどうなるかって当然分からないですし、それからそういう意味では、そこから先はまたその都度きっちり考えていくことになると思うんですね。どれくらいの間隔でというのは、私どもみんなで考えている話ではないですから、1回ずつが非常に大事だと思ってます。よく概ね半年という報道を目にしますけど、平均したらそうなのかもしれませんけど、今までマイナス金利の解除をしてからは 4 回、間が空いていて、最初は 4 か月でしたか。[2024年]3月[から]7月、4 か月ですね。それから次が 6 か月で、確かに。その次がちょうど私が去年[審議委員として]入ったときですけど、ここ 11 か月空いていて、またこの間が 6 か月でしたので、それは 6 か月が 2 回あったからということからイメージされているのかもしれませんけど、別にそういうことを計算してやっているわけでもありませんし、1回1回そのときの状況がすごく違うというのもですね、是非思い出して頂ければと思います。例えば、私が去年ここに入行したときって、ちょうど米国の関税の問題が起きてたときですから、その中で、その状況を見極めなきゃいけないということもあって、11 か月と間が空いてたと。
§13Kazuyuki Masu
それから去年というか、この間上げるまでの 6 か月間というのも、またイランの問題が起きてたので、これも状況の見極めが必要だということが起きてましたから、こういう状態に合わせてやっていることなので、利上げしたことの影響を見極めるのについて5も、そのときそのときで新しいイベントが起きていないとも限りませんから、その都度考えていくことになるかなと思います。そういう意味では、半年のペースということそのものもですね、もう結果でしかないので、1回ずつきっちりと議論して検討してやっていくということになると思います。
§14Question
ちょっと関連した質問になるかもしれませんけども、審議委員としては、更なる利上げの必要性というのはおっしゃっていて、一方で物価上昇率が 2%にかなり近づいているということにも言及されています。結果的にここまでそういうペースでの利上げになってますけども、これまでと同様のペースでやると、後手に回ると言いますか、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがあるというふうにお考えでしょうか。ご認識をお願い致します。
§15Kazuyuki Masu
そうですね。更なる利上げ、私も書いてますけど、これ、7月もそうです。それ以前から展望レポートにずっと日銀の、全員の一致かどうかは別として、総意としては出している意見ですので、その線に沿って今日の[挨拶要旨]は作らせて頂いていると思います。確かに 2%に近づいてるんですけど、先ほどのロイターさんのご質問と同じ答えになっちゃうかもしれませんけど、ビハインド・ザ・カーブという言葉の意味にもよると思うんですけども、大きく急激に上振れていくかどうかというと、そういうのを感じるようなデータも今のところはなくて、この後、当然私どもとしては 7月の展望レポートに載せてたように、今年[度]の後半から今の物価上昇率はもうちょっと上がって高いところに行くというのは承知してやってますし、あくまでその線に沿っている限りですね、大幅で急激な上昇というのを、今、危惧してやっているということはないと思います。
§16Question
私からは一点、利上げと地域経済の影響についてお伺いしたいと思います。緩やかに回復しているというご認識だったかと思うんですけれども、福井県経済は。一方で日々取材しておりますと、少し利上げされると利益がほとんどなくなっちゃうんだっていう中小・小規模の事業者さんは多くてですね、なかなかそうなってくると次の成長投資に、利上げ局面ではなかなか借入れできないよねっていう声も多く伺います。そうした情勢を踏まえると、なかなか地域の金融機関としても、貸出の金利は上げにくいと。一方で預金の金利は敏感に上げていかなきゃいけないし、なかなか利上げのペースが速いとついていけないところもあるよね、みたいな話もやっぱり地域を取材しているとよく聞くのですが、そうした地域経済に与える利上げの下振れリスクに関してですね、どのようにケアしていくべきだと思われているのかお考えをお聞かせください。
§17Kazuyuki Masu
非常に重要な点でして、そういう話、今日もそれから昨日からもたくさんそういうお話を伺ってますので、逆に言うとそういう話を直接現場で拾うためこうやって回らせて頂いてますので、そういう声があることは実際確かですし、統計ではなかなか出にくい小さな会社というお話も非常に大事な話と思って承ってます。われわれ6でやれることはですね、そこをとにかく丁寧に拾いながら、短観のようなデータはどうしてもスピードと量が限られてますから、それでも短観ってすごい量を取ってるんですけど、そこで拾いきれないようなものは、支店ですとか事務所で吸い上げて、支店長会議はそのためにやっていて、かなりの分量の話をそこで伺ってますので、そういうのを聞きながらですね、必ず悪い影響が及ぶところについても聞き漏らさないとか、目を離さないようにやっていくことが、われわれとしても必要だと思いますし、メディアさんも含めてですね、各地域からも発信して頂けると大変ありがたいかなと思います。
§18Question
二点お伺いします。いずれもちょっと海外情勢についてなんですけれども、一つは午前の講演でも、イラン情勢を受けて世界中がインフレ懸念の利上げモードとなっているっていうご指摘があったかと思います。多くの国が利上げの方向を向いている中で、今後の日銀としての利上げを考えるうえでどこまで世界の利上げモードっていうのを考慮するのか。裏を返せば日本だけ利上げに慎重になるなんていう選択肢はあり得るのかというのが一点。もう一つは、ちょっと話変わるんですけれども、ベッセントアメリカ財務長官が、先月30日に植田総裁と面会したときに、円安を巡って、断固とした市場、金融政策上の措置を講じることを強く支持すると、そういうふうに伝えたと報じられています。利上げを促しているように聞こえるんですけれども、この発言の受け止めについて増さんのご意見をお聞かせください。
§19Kazuyuki Masu
今のもきっと聞かれるなと思ってたんですけども、まず前半の方は、イラン情勢からですね、それまではですね欧米は利下げモードだったのが逆になっているということは事実で、それについてわれわれがどうするっていうことは別にないと思うんですね。むしろ、挨拶の中にも書いていたと思うんですけども、今まで逆にいたんですね。欧米が利下げしているときにわれわれは上げていかなきゃいけないという、非常に苦しいことをずっとやってきてたんですけど、そういう意味では、方向性が一緒っていうのは、前よりは、去年の今頃よりは、ある意味でやりやすいですし、全く意識しないというわけでもないですけども、わが国の実情に合わせて、ちゃんと考えていくということが必要かなと思いますから、別にわれわれだけ慎重になるというのは決してないと思います。それから、アメリカの財務長官の話ですけど、これは私がコメントするような立場に全くないんですけれども、われわれとして言えることは、緩和度合いの調整に関しては、わが国の中央銀行として適切に判断をしていく、これに尽きると思います。
§20Question
一点質問できたらと思います。長期金利についてお伺いできたらと思います。長期金利、今月1日にですね 30年ぶりとなるですね、3%台となりました。先ほどもちょっと福井新聞さんの質問にも絡む部分かとは思うんですが、家計や企業への影響なども含めてですね、この水準を今どのように率直に受け止めているのかが一点で7す。また日銀としてはですね、急上昇した場合にはですね、機動的に国債買入れの増額を実施するとしていますけども、この現状の水準というのは、いわゆる急上昇している部分だとみているのかですね、その辺についてお聞きできたらと思います。
§21Kazuyuki Masu
長期の金利はマーケットで形成されるということが今の私どもの基本線ですので、それに沿って動いているんだということだと思うんですけど、今、実際に原油が上がってということも含めて、各国ともそれぞれにそのインフレの問題とそれから財政の問題、各国ともありますので、そこでこういう高い金利になってきているんだなと思ってます。これが今、結果的にこういう状態をつくってますけれども、もちろん機動的なオペについてはお約束していることですが、あくまでも例外的な状況においてはやりますと言ってますので、今が例外的な状況かどうかということで判断することになるかと思います。以上